研究室概要

本研究室では、アナログ量の信号処理のための電子回路の研究をしており、トランジスタの特性を十分に活かした回路設計を目指しています。トランジスタなどの素子の特性を考慮して適切な回路構造、また原理に基づき適切な素子値を選ぶことで回路特性の向上を図るのがアナログ回路設計技術です。電圧や電流といった物理量を扱った設計は、様々な電子回路、集積回路の基盤技術となり、多くの知見を与えてくれるとの考えから、トランジスタレベルでの設計が重要と考え、種々のアナログ回路技術の提案を行なっています。

アナログ回路の設計では、与えられた設計仕様のみならず、明示されていない物理的制約をも考慮しなければなりません。非常に大 きな自由度を上手に利用して、多種多様な仕様項目を調和させることができますが、同時に広い視点から回路の動作について、よく検討する必要があります。大学院の学生は各自が必要と考えるテーマを自由に選び明るい雰囲気の中で研究を進め、輪講という形式で新しい回路構造や原理、設計法のアイディアを研究グループ全員に説明して指導や意見を受けることで、理解を深めていきます。各自の研究を通して知識の蓄積だけでなく、動作の理解がないままのシミュレーション結果は信頼できない、ということなど経験を通して回路設計に対する基本的な姿勢も学んでいます。

研究テーマ

電子回路の研究に必要な新しい回路構造、原理、設計法の提案と、それらに基づいた様々な仕様に特化した回路の設計について、現在、大別すると次のようなテーマに取り組んでいます。

各種回路ブロックの高性能化

演算増幅回路に代表されるような各種回路ブロックを高性能化することで、フィルタやPLLなどやや大きめの回路を設計することを目的としています。具体的には、OTAの高線形化や低電圧化、広帯域化、低消費電力化などを行ない、フィルタの特性改善をします。また、スイッチトカレント回路におけるクロックフィードスルーの除去など、離散時間系アナログ信号処理も重要な回路ブロックと考えています。

新しい信号処理回路の開発

可変利得増幅回路や光通信用低雑音トランスインピーダンスといった増幅回路のほかに、用途別フィルタとしてWCDMAベースバンド用、ビデオ信号用、ハードディスク用、IF帯などの設計技術に取り組んでいます。電流モードフィルタでは数百MHz帯で動作する回路を開発しました。いずれの設計においても各回路ブロックの高性能化やそれらの接続についての検討のみならず、トランジスタレベルで回路全体を見渡しての簡単化など設計の各段階での工夫が必要となります。さらに、PLL によるフィルタの周波数特性の自動チューニングに、スイッチトキャパシタ技術を取り入れて、高精度化、低消費電力化を行なうなど、広く回路の性能向上に努めています。

低電圧化原理

アナログ・ディジタル混載回路の低電圧化が急速に進んでいる中で、アナログ回路部分は、ディジタル部分ほど低電圧化が簡単ではありません。我々は、非線形な回路特性を利用して信号を処理し、低電圧下においても入出力の関係が線形にできる回路構成を模索しています。そのような手法としては、コンパンディングが知られるようになってきましたが、理論的および実用的課題が多く残され,その可能性を引き出せる回路を検討しています.同時に,有用性が明確になり信頼に足るような基礎となる回路手法や原理は見受けられない現状で、我々は低電圧化手法として、信号分割を提案しています。これまでの回路の中で使用していなかった節点を利用して信号を分割、処理するため、雑音の増加を抑えたまま大きな電圧信号を扱うことが出来ることが期待できます。この手法により、1.5 V 電源で、内部信号が 1.5 Vp-p 以上相当となる低雑音での信号処理を可能とすることを目指しています。現在のところ、入力信号に雑音やオフセットが加わった場合でも、増幅回路やフィルタが動作することを確認しています。

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